気に入った言葉 vol.1
- koukobiyori
- 2011年6月27日
- 読了時間: 3分
更新日:5月17日
私が尊敬している内田樹(うちだ たつる)先生のお言葉。
自分の備忘録のために引用しておきます。
朝日新聞の連載「女と男」に描かれた現代の男女の関係を受けて、エピローグとして内田先生が寄せた文章です。
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男女関係がすごく退行しているなぁ、年齢を問わず社会性がなくなった.連載を読んでそう思いました。
去年、「されどわれらが日々」(柴田翔)を40年ぶりに文庫の新装版(文芸春秋)で読みました。60年代に出た若い男と女の物語ですが、彼らは敬語で語り合う。政治や文学、社会正義や孤独感を真剣に言語化する。戦後、足元がぐらぐらの時代に生まれ、社会がどうなるかを意識した世代です。そのころと比べ、今は信じられない男女ワンダーランドです。
とにかく結婚に縛られている。しかも理想の結婚形態は一つしかないと思うから、達成できないとストレスがたまって別れちゃう。結婚なんていろんなバリエーションがある.親族とのつきあいや経済的な関係も、無限に多様でいいはずだし、愛なんかちょっとあればいい。
いまの人が男女関係で苦しんでいるのは愛情の欠如じゃなくて、相互の敬意の欠如ではないですか。だんなの愛情がなくなったって?なくなったのは敬意なんです。
恋愛の初期にあって、その後、急速にしぼんでいくのは社会的人格に対するリスペクト.鉄道マニアであるとか、天文学が好きとか、自分とは違う社会観や趣味、嗜好に対して「くだらない」となる。いくらほかのところでベタベタ仲よくても、それを言っちゃ、おかしい。
なんでこの人にはこんなこだわりがあるんだろう、とあふれる好奇心と敬意をもって見つめる。理解できないけれど、いつも一緒にいたくて抱きしめたくなる。なぜか。自分の中にあるブラックホールと対応しているからですよ。
肝心なのは人間関係を理解と共感の上につくってはいけないということ。つくろうとするから、みんなすぐ離婚しちゃう。
たとば結婚して5年、まじまじと横顔を見たら、何を考えているかわからない男がいた。「こりゃエイリアン(異星人)だ」って、ゾゾッとするわけ。それがおかしい。異物と暮らしているにきまってるんだから。人間は一皮むいたらエイリアン。その一皮のおかげで社会生活を営んでいられる。
そんな何考えているんだかわからない不気味な生き物と暮らせてすごいと、共生できる能力に感動すべきなんです。ぴたり理解して生活できるのが愛だと勘違いしているから、ちょっとでも異物だと感じると、我慢できなくなる幻である「百%の理解」が成立する関係を求めてしまう。
つきあうほどに底知れぬわからない人だと互いに見えてくる。1日、1週間、1年とつきあっていくほどに、理解できる部分より理解できない部分のほうが多いことに気づいていく。それこそが人間関係の一番深いところじゃないですか。金婚式まできたけどわからなかった、じゃ、別れようって、論理的に逆ですよ。
ずっと一緒にいるから言葉なんかいらないと思ったら、ダメですよ。どんどん言葉が増えてくるはず。これまで使ったことのないような語彙で語りかけないと。相手のことをわかっているとたかをくくっちゃうのが一番怖いんです。
「あなたの言いたいことはよくわかったわ」っていうのは別れのときのセリフでしょ。だから、わかっちゃいけないんです。女と男を漢字1文字で表せば「謎」。ミステリーは大事だよ。
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男女の事に限らず、相手のことが理解できないとか、フィーリングが合わないとか、些細なことで人間関係に溝をあけがち。
でも、相手のことがわからなくたって、理解できないところがあったって、ずれを感じたって、それをおもしろいと思って、個性として受け止める人でありたいと思っています。
