top of page

銅を打ち延ばして200年、老舗の工房「玉川堂」へ

  • koukobiyori
  • 2016年2月1日
  • 読了時間: 3分

燕市産業史料館で基礎知識をつけてから向かったのは、創業200年を迎える鎚起銅器(ついきどうき)の老舗「玉川堂(ぎょくせんどう)」です。


ree

 燕と銅のつながりは、江戸時代に遡ります。近郊の間瀬から良質の銅が産出したことにより、銅を使った日用品がすでに作られはじめていたそうです。そこに仙台から「鎚起(ついき)」の技が伝わり、鎚起銅器の製造が始まりました。玉川堂は7代目当主のもと、18名の職人さんが生活用品や伝統工芸品の銅器をつくっています。木造の母屋は築100年。2008年には国の有形文化財にも登録された建物で、天井が高く、灯りが十分に入り、音が抜ける構造です。

 

ree

中へ入ると、「タン、タン、タン、タン」とリズミカルな音がいくつも重なって聞こえてきます。鎚起銅器でもっとも難易度が高いのは湯沸かしや急須の「口打ち出し」という技法。一枚の銅板を20回以上焼き鈍(なま)して注ぎ口まで一体成形する技法で、すべて手作業で仕上げた湯沸かしは高価なものでは100万円ほどするものも! 職人の技を細部にまで感じられる逸品は、待ち客が出るほどの人気ぶりです。現在、海外からの注文が2割を占め、百貨店売上の半分は外国人の方だとか。こうした手仕事を美しいと思う心に国境は無いようです。


ree
ree

工房では目の前で職人が、金「鎚」で銅を打ち「起」こしては焼き鈍し、打ち絞る作業をしているところが見られます。職人さんはみな、切り株のような作業台に座って製品を叩いていますが、この台はケヤキ製。ケヤキでないと衝撃を受けきれないそうです。この台に鉄棒を差し込み、金鎚で打ちます。製品の寸法はすべて職人の頭の中に入っており、その大きさやカーブにより、200種の鉄棒と300種の金鎚を使い分けていくのだそう。銅板が職人さんの手のうちで、素直に形を変えていく様は魔法を見ているかのような気分。時間を忘れて見とれてしまいます。

 

ree

叩いて固くなった製品は、700〜800℃に熱した炉で焼き鈍します。銅は触れたものの温度になる性質があるため、水につけて十数秒で触れられるほどに冷めます。焼きなました銅はグネグネと手でも曲げられる柔らかさ!ここからまた、皺や亀裂が入ったりしないよう注意を払いながら、打ち縮めていきます。気の長い作業ですが実に興味深く、一度挑戦してみたくなりました。


ree

 

成形したら着色や磨きなどの仕上げ工程を経て、完成です。毎日使い、毎日磨き、毎日愛でる…その繰り返しで、ツヤと深みが増し、自分だけの大切な逸品へと成長していきます。

つけ込む溶液の種類、時間、温度などによって、7色の色が出せるそう。つけ込み樽はウナギのタレのように、代々継ぎ足しながら使っているもの。職人の技とサビのコーティングにより、独特の色合いが生まれます。

 

ree

「大切に扱ってくれる方と、長くコミュニケーションをとっていきたいですね。銅器の販売より、銅の扱い方の布教活動をしているようなものです」と語るのは案内してくださった山田立番頭。数年前まで2000アイテムもあった商品を玉川堂らしさと売れ筋とで絞り込み、今は300アイテムほどに。花器や茶器、酒器などの定番のほか、コーヒーポットやドリッパーなどが人気をよんでいます。

 

ree
ree

 

6代目の実弟である玉川宣夫氏は人間国宝!その作品が飾られていましたが、何をどうすればこのような文様が出るのか…素晴らしい技術です。東京・青山の骨董通りにも直営店があり、最新アイテムなど常時70種を展示販売しています。まずは実物を見てみたい!という方はぜひ足を運んでみてくださいね。

 

玉川堂http://www.gyokusendo.com/ ***

元記事 :「和を知るミチシルベ」

アップ日:2016年2月11日

© 2010〜2015 寧鹿舎 ©2015 好古日和

bottom of page